センター長 魚住絹代

 

魚住絹代 Uozumi Kinuyo  (公認心理士登録申請中、元法務教官、元訪問指導アドバイザー、元SSW)

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熊本県出身。福岡教育大学卒業後、福岡、東京、京都の少年院、医療少年院で、法務教官として非行少年・少女の立ち直りを支援。2000年退官後、大阪府の小中学校で、訪問指導アドバイザーやスクールソーシャルワーカーとして活躍。その活動は、これまで、クローズアップ現代やNHKスペシャルでも取り上げられる。

著書に『子どもの問題 いかに解決するか』(PHP新書)『母親が知らない娘の本音がわかる本』『みんな抱きしめたい』『母親力』(以上、大和出版)、『いまどき中学生白書』(講談社)、『女子少年院』(角川書店)など。第1回公認心理師試験合格。

 

当センターの沿革

日本心理教育センターの原点であるくずは心理教育センターは、大阪と京都の境に位置し、淀川の向こうに天王山を望む樟葉(くずは)の地に、2013年に誕生しました。いつしか手狭になり、二年後、大阪の中心部でありながら、レトロな建物も残る北浜に、大阪心理教育センター(大阪市中央区)を開設しました。関西のみならず、全国から多くの利用者が来所され、日々熱い、心のドラマが繰り広げられています。現在、約50名のカウンセラーが、月間およそ千件のカウンセリングを行っています。
 首都圏からの来訪者も多く、かねてから東京にもセンターをとの声がありましたが、そうしたご要望に応えるべく、この度、神楽坂に、拠点を開設する運びとなりました。これもみなさまのご支援の賜物と深く感謝しております。

神楽坂は、新宿や飯田橋に近く、どの方面からもアクセスに恵まれるでなく、瀟洒な住宅や出版社が並ぶ落ち着いた一帯で、訪れる人はきっと、周辺の町並みも気に入ってくれることと思います。
これからも、一人一人の特性を生かし、生きづらさを強みに変えていくサポートをこれからも続けていきたいと思います。また、発達の支援や職場、対人関係の問題へのサポートとともに、親子関係やご夫婦、カップルの問題にも、愛着という視点から取り組んでまいりたいと、決意を新たにしております。今後とも、どうぞ宜しくお願い致します。

 

私の原点

私は人の成長や人格形成に関心があって、子どもの成長や子育てに関わる支援をしてきました。最初は幼稚園の先生からの出発でした。「三つ子の魂百まで」という言葉から、幼児期が大事かと思ったのです。子どもは大好きだし幼児期は確かに重要なのですが、小さい頃に受けた教育や子育てが、その子の人格や人生にどう影響を与えるのかを追いたくて、その後少年院の教官になりました。

1000人を超える非行少年・少女たちとの出会いは、大きな疑問からスタートします。「なぜ、こんな事件を起こしたんだろう」「なぜ、そんな風に振る舞うんだろう」。生活を共にする中で、必ずそこに至るだけの道筋が見えてきます。当然のことですが、彼らは非行少年になろうと生まれてきたわけではないのです。立ち直りのプロセスの中で、どの子も、ただ愛されたかった、わかってもらいたかったという思いを強くもっていました。それがうまく伝えられず、周囲にもうまく受け止められず、すれ違いの中で分岐点を歪んだ方向に進んでしまっていたのでした。彼らの立ち直りは、まさしく育ち直しでもありました。ですが、普通に育っていくのと違い、いったん育ってからの育ち直しは、生まれ変わるほどの試練です。彼ら自身「小学4年に戻りたい」「幼稚園からやり直したい」という言葉がこぼれます。立ち直りに寄り添う中で、育った環境と周囲の対応がいかにその子の人生に影響を与えるのかを目の当たりにしてきました。もっと早い段階での発見と手当ての必要を感じ、2003年より小中高の学校に活動の場を移し、困難なケースを中心に、子どもや親、教師の支援を行ってきました。

学校では、不登校やひきこもり、発達の課題などからくる集団不適応、学習面のつまずき、非行、対人関係のトラブル、摂食障害、リストカットなど、さまざまな問題があります。ですが、丁寧にひも解いていくと、必ずそこに至るだけの背景が見えてきます。彼らの問題行動はある意味、安心できる居場所がない、自分らしく育てていないという悲痛な叫びなのです。その証拠に、周囲が行動の意味を理解すると、みるみる回復していきます。子どもの回復にとっての第一歩は、周囲の理解と適切な対応の仕方なのです。それが、彼らにとって安心できる居場所につながっていきます。育ちに、もうひとつ大事なことは、存在価値です。勉強がわかる、友だちとうまくつながれるということが、自分らしく振る舞える自信となり、さらには社会で自分を生かしていくための力になっていきます。そのためには、何につまずいているか、どこが弱いのかを知り、丁寧にフォローアップしてあげることが重要です。

 

発達だけでなく愛着という視点が、有効な問題解決に

当センターが注力する一つの大きなテーマは、発達に課題を抱えたお子さん、そして大人の方のサポートです。社会的スキルや共感性、注意力、ワーキングメモリーなどを改善するためのプログラムを提供してまいります。スキルだけでなく、ともに感じる共感を大切にした取り組みにも力を入れています。自分の気持ちを表現する喜びや人と気持ちを共有する楽しさを味わいながら、コミュニケーション能力を高めていく醍醐味を体験してください。対人関係で困難を感じている人、人といることに違和感を覚えたり安心感がもてない人、心の傷を抱えている人にも効果的です。


もう一つ大きな柱として、改善に取り組んでいるのが愛着の修復や安定化です。愛着は、幼い頃養育者との間に築かれる絆ですが、親子関係だけでなく、すべての対人関係の土台となっています。愛着が傷つき、不安定になると、そこからさまざまな問題が生じてきます。いつも自己否定や空虚感に抱えている人、人との関係に安心感が持てず、気を遣いすぎたり、親密な関係を避けてしまう人、求めている相手を同時に避難したり攻撃してしまう人、そうしたケースの根底には、不安定な愛着の問題がひそんでいるのです。発達の課題を抱えた人では、愛着の問題を起こしやすいことも知られるようになっています。当センターでは、愛着研究の第一人者で、愛着障害に関する多くの著書で知られる岡田尊司氏の指導のもと、愛着という視点から働きかけるアプローチを行います。親子関係やパートナーとの関係にも有効な手法です。

行き詰っているとき、人は子どもでも大人でも、自分の問題が見えなくなっています。そんなとき、求められるのが、その人に寄り添い、傷ついた気持ちを受け止めながら、問題解決へと誘い、支えてくれる存在です。そうした存在が仲介役となり、その人のおかれた環境との調整をすることも大切です。自分一人の力ではどうにもならないから、行き詰っているのです。そんなとき、われわれ専門家の経験とノウハウを活用していただけたらと思います。

子どもは大きな変わる力を持っています。手当てが早いほど、改善もスムーズです。また、大人の方では、考え方や物事の受け止め方が大事です。問題を解決したいけど、問題に向き合う勇気がないという場合も、どうすれば問題を解決できるのかという場合も、これまで多くのケースで、困難な問題を解決してきた経験を活かして、アドバイスや支援をさせて頂きます。

   

顧問、プログラム開発 医学博士 岡田尊司

 

 

岡田尊司 Okada Takashi

香川県出身。東京大学哲学科中退。京都大学医学部卒業。同大学院高次脳機能講座神経生物学教室、脳病態生理学講座精神医学教室にて、脳機能や社会性発達の研究に長年従事するとともに、京都医療少年院、京都府立洛南病院などで発達障害やパーソナリティ障害の治療に取り組む。2013年岡田クリニック開院。山形大学客員教授として、研究者や教員の社会的スキルの向上やメンタルヘルスにも取り組む。

著書に、『アスペルガー症候群』『発達障害と呼ばないで』『ストレスと適応障害』『うつと気分障害』『境界性パーソナリティ障害』(以上、幻冬舎新書)『パーソナリティ障害』『子どもの「心の病」を知る』『統合失調症』『働く人のための精神医学』(以上、PHP研究所)『愛着障害』(光文社新書)『母という病』(ポプラ社)など多数。